サマリー
420万世帯の60代単身世帯
もう10年以上前、男性の生涯未婚率が2割を超えたとマスコミが注目しました。生涯未婚率とは45₋49歳の未婚率と50-54歳の未婚率の平均を取って50歳の未婚率を算出したものです。しかし、50歳で結婚していなければ生涯結婚しないとでもいうようなこの定義は、ちょっと時代遅れの感もありますね。
ところで既婚か未婚かは別にして、60代で単身世帯はどれくらいの規模になっているでしょうか。2020年の国勢調査によると、60代の男性は767.6万人、女性が800.3万人です。そのうち有配偶者世帯の構成比は、男女ともに73%前後です。ということは単身世帯がともに3割弱となっているということです。
ただ、単身世帯の内訳をみると、男性の場合は未婚が6割と多く、これは先ほどの男性の生涯未婚率の高さとも一致しています。これに対して女性は、7割が離死別による単身世帯なのです。ちなみに、婚姻状態は関係なく、60代の単身世帯は合計で420万世帯にも及んでいます。
60代の婚姻形態別、男女別人数
単身世帯の金融資産格差は大きい
60代単身世帯は保有する金融資産の格差が大きくなっています。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査2021」によると、60代単身世帯のうち金融資産を保有していないのは全体の28.8%と、2人以上世帯の同比率より10ポイント弱高くなっています。また金融資産を保有している60代単身世帯の中央値は1,180万円と平均値2,645万円を大きく下回っており、さらに中央値は平均値の44.6%と、2人以上世帯の同比率46.4%を下回っています。これらのことから、金融資産保有額では単身世帯の格差の方が大きいことがわかります。
世帯構成・年代別の金融資産の平均値、中央値
配偶者の存在は男女ともに生活全般の満足度を高めている
男女合わせると420万世帯に上る60代単身世帯の生活満足度はどうなっているのでしょうか。フィンウェル研究所が2022年2月に行った「60代6,000人の声」アンケート調査からみてみましょう。ちなみにこのアンケート調査の回答者総数6,486人のうち、有配偶者世帯構成比は70.1%、単身世帯比率は24.0%で、国勢調査の60代の結果とほぼ同じになっています。
アンケートでは、生活全般の満足度を「満足できる」=5点から「満足できない」=1点までの5段階で評価していただきました。その結果、有配偶者世帯の満足度の平均値は3.30点、単身世帯のそれは2.86点でした。「どちらともいえない」=3点であるため、3.30点である有配偶世帯は「どちらかといえば満足できる」に近い数値となり、単身世帯は2.86点と「どちらかといえば満足できない」数値といえます。
単身世帯では資産運用をしていることが生活満足度を高める
統計的な分析をすると、配偶者のいることは60代の生活全般の満足度にプラスの影響をもたらしていることがわかりました。ただ、注目したいのは単身世帯だけに強く表れた、「資産運用をしていることが満足度を高めている」という特徴です。これは有配偶世帯には有意に現れなかった特徴ですので、単身世帯特有のものといってもいいでしょう。
60代単身世帯にとって、資産運用をすることそのものが生活全般の満足度を高めていることは、総じて満足度が低下するシニア単身世帯にとって対策の重要な対策といえそうです。もちろん現役時代に資産運用をしなかった人が、60代になってから資産運用を始めるのは簡単には勧められません。しかし、現役時代から少しずつ資産形成を行って、60代になってもそれを継続するような姿勢は単に生活水準を確保するということだけでなく、生活の満足度を高める点でも大切になるのではないでしょうか。