そろそろ確定申告の時期が近づいてきていますね(執筆時2025年1月9日現在)。確定申告の義務があるかないかに関わらず、税金のかかり方や節税の仕方などに興味を持つと、資産形成に役立つことが多々あるものです。日本では会社員など確定申告をする必要がない人も多いですが、フランスでは基本的に所得が発生する人は全員確定申告が必要であり、税金への関心が高い人が多い傾向です。

この記事では、フランスの確定申告の仕組みや日本との違いについて紹介します。

フランスではみんなが確定申告をする

フランスでは会社員、自営業者等、職業に関わらず、所得があると基本的に全員が確定申告をします。元々フランスでは給与から所得税や住民税を源泉徴収する制度がなく、税金は各自が申告する決まりでした。
2019年に源泉徴収制度が導入され、所得税が給与から天引きされるようになったものの、従来どおり全員確定申告が必要です。理由としては、源泉徴収率を自分で選べたり、会社での年末調整がなかったりと、確定申告によって税の過不足を調整して納税(還元)が必要になるためです。各自で確定申告書を書いたり、オンライン申告をしたりする必要があるため、フランスでは税金への関心が高い人やある程度の税知識を持つ人が多い傾向にあります。

フランスの確定申告は世帯単位

実は筆者は2005年からフランスに移住しているのですが、フランスの確定申告制度について、特に日本と違う点を簡単に紹介します。

まずは所得税申告および課税の単位です。日本では所得税の課税は個人単位ですが、フランスでは世帯単位です。例えば夫婦であれば、確定申告時に申告者1、申告者2というようにして、ひとつの申告書に各自の所得や所得控除を申告します。仮に一方が専業主婦(夫)で所得がゼロでも同様です。PACSという公的な同棲カップルも夫婦とみなされ、一緒に申告が必要です。

確定申告期間についても驚きました。前年1月1日~12月31日の1年間の所得を翌年の確定申告期間中に申告する仕組み自体は日本と同じですが、フランスでは申告期間(日本では毎年2月16日~3月15日)があらかじめ決まっていません。大体4月初め頃~6月初め頃までであり、具体的な申告期間は毎年政府から公表されます。

面白いのが、最終期限は紙媒体での申告かオンライン申告かによって異なること、さらにオンライン申告の場合は地域によっても異なることです。フランス全土が3つのゾーンに分けられており、早い地域と遅い地域では2週間以上差がある場合もあります。

なお、2024年の確定申告(2023年分の所得)は4月11日に開始され、申告期限は以下のとおりでした。

申告方法居住地域申告期限
 申告書による申告フランス全土2024年5月21日23時59分
 オンライン申請県番号1~19および海外居住者2024年5月23日23時59分
県番号20~542024年5月30日23時59分
県番号55~9762024年6月6日23時59分

申告後は夏頃に「Avis d’impot」という納税通知書(課税額が記載された通知書)が届きます。これは、保育園や幼稚園、ローンの申込みなどさまざまな場面で必要となる書類のひとつです。課税額によって、保育料や給食代が変わったり、ローンや奨学金、家族手当(社会扶助制度のひとつ)などの申込み条件が決まったりします。

筆者自身も渡仏後すぐに大学に入って無収入だった頃に、所得ゼロで申告したところ、どこから情報を得たのか電気代軽減の提案を受けたり、観光施設の入場料が無料になったりと、少しラッキーな経験をしたものです。

日本でも確定申告に関心を持ってみよう

日本とフランスでは課税や申告の仕組みが違うとはいえ、副業や投資などで本業以外の収入を得る人も増えてきている昨今、日本でもますます正しい税知識の習得が必須になってきています。税に関する知識が増えると、節税や支出軽減などにも役立ちます。税金に関して「難しい」「ややこしい」「計算が面倒」などと敬遠せずに、関心を持ってみてはいかがでしょうか。

税の知識はこんなところで役に立つ

最後に、日本の税制で税金の知識が役に立つ場面を3つ紹介します。

  1. 医療費控除や住宅ローン控除(借入れ1年目)
    医療費控除や住宅ローン控除には、適用条件があります。該当している場合でも、会社の年末調整では控除を受けられません。確定申告をすることで、税の還付を受けられます。
  2. 副業による所得がある
    副業で得た所得が20万円を超えたときには確定申告が必要です。その際、副業の種類によっては、青色申告をすることで最大65万円の「青色申告特別控除」を受け、課税額を抑えることができます (所得の対象は事業所得または不動産所得)。
  3. 投資をはじめるとき
    投資信託や株式への投資をはじめる場合、証券会社で口座を開設する必要があります。口座の種類は大きく「NISA口座」と「課税口座」があり、課税口座には「一般口座」「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」があります。課税の有無や確定申告の要否だけで選びがちですが、税の知識があれば、利益や損失が発生した場合にどの口座が有利になるかを考えて選べるようになるでしょう。 

まとめ

私たちの身の回りで発生する収入や支出の多くは、税金とのつながりがあります。皆さんも確定申告が必要かどうかに関わらず、あらゆる場面において税金に関心を持ち、ぜひ節税や資産形成に役立てていきましょう。

※本文は、著者の調査・経験に基づき一般的な内容を掲載したものです。また、各種制度、政策および投資環境については執筆時点のものであり、将来変更となる可能性がございます。資産運用においてはお客様ご自身の収入や貯蓄、生活スタイル等に基づいてご判断ください。

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コラム著者

續 恵美子氏 
ファイナンシャルプランナー(CFP®)