2024年から新NISAが始まり、NISA口座の開設数が増加しています。これまで日本は預貯金や保険で資産を保有する人が多く、投資に回るお金が少ない点が指摘されていましたが、徐々に投資に回るお金が増えるかもしれません。新NISAの開始に伴って投資を始めた方も、投資をしながら経済に関する知識を習得し、金融リテラシーを高めていきましょう。

NISAの口座開設数は右肩上がり

日本証券業協会の資料によると、NISAの口座開設数は右肩上がりで増加しています。2024年3月末時点において、これまで2,300万以上のNISA口座が開設されており、約41.4兆円の新規投資が行われています。

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2024年からNISA制度が拡充され、徐々に投資意識が高まってきた影響が、口座開設数に影響していると考えられるでしょう。

口座開設数だけでなく、累計買付額も順調に増えています。今後ますます投資に回るお金が増えれば、企業業績の拡大や国民の資産所得の拡大という形で還元されることが期待されています。

日本銀行の資料では、2024年6月末時点における家計資産の総額は2,212兆円で、その内現金・預金は1,127兆円でした。

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家計においては資産の半分以上が現金・預金となっていますが、例えばこの1%が投資に向かえば、約11兆円がマーケットに流れます。投資に回るお金が増えれば、経済の活性化が期待できるでしょう。

「始める」だけでなく「投資がもたらす影響」を考えよう

投資商品にはさまざまな種類がありますが、中でも初心者に人気があるのが、運用をプロに任せられる投資信託です。投資信託は手軽に分散投資できるため、初心者でも始めやすい魅力があります。

運用商品の入れ替えは運用のプロに任せられるため「投資信託を購入したら、そのまま放置しても問題ない」という意見もあります。確かに目先の価格変動に一喜一憂せず、長期間放置し続けることで、結果的に利益を得られる可能性が期待できるでしょう。これは、運用期間が長くなると複利効果が大きくなることに加えて、短期投資よりも収益の振れ具合が小さくなり,安定的な収益を得やすくなるためです。

しかし、大切なお金を金融市場に投下している以上、経済に関するニュースに意識を向けたいところです。運用自体はプロに任せていれば、投資家自身はまったく勉強しなくてもよいというわけではありません。

金融リテラシーを高めるためには、実際に投資経験を通じて「投資をすると、どのような影響があるのか」を考えることが効果的です。

例えば、最近は全世界の株式やアメリカ企業の株式を投資対象とする投資信託が人気を集めています。海外へ投資する投資信託を購入すると、購入するときは円で払い込んでいますが、円を外貨に替えて運用されています。

海外へ投資する人が増えると、多くの円が売られるため、円安圧力になると考えられるでしょう。日本は多くの原材料を輸入に頼っていますから、円安圧力がかかれば国内物価の上昇につながります。

日本銀行は物価をはじめとしたさまざまな情報を参考にしながら金融政策を決めますから、物価の上昇が進めば金融引き締め(利上げ)を行う可能性が高まるでしょう。

多くの企業は、金融機関からお金を借入れて事業を行っています。金利が上がれば借入金がある企業にとっては返済負担が重くなるため、株価の下落につながりやすくなるでしょう。しかし、お金を貸して利息を得ている金融機関の収益性が向上することが、株価上昇を後押しする場合があります。

このように、投資を通じて経済の仕組みを知ると、物価上昇率や金融政策に関するニュースが有機的に結び付きます。物価や株価など、実生活にも影響が出るため、感覚的にも理解しやすいのではないでしょうか。

「円安が長引きそうだ」と考えるのであれば、資産の大半を円で持つのはリスクが大きいと判断できます。自分の資産を守るうえで、余裕資産の何割かは外貨で持つ必要性がある、という判断を下せるでしょう。

「投資をすると自分の資産が増える可能性がある」というミクロな視点だけでなく、「経済全体にどのような影響があるのか」というマクロな視点から考えると、金融リテラシーが高まります。

また、投資信託の目論見書や運用報告書を読み込んでみましょう。投資目的や投資対象、具体的なリスクを把握し、理解できない点があれば自分で調べることで投資家としてのレベルを高められるはずです。

大切な資産を守るうえで大敵となるのは、冷静さを欠いた判断や知識不足による安易な判断です。逆にいえば、十分な知識を得て、いつでも冷静に判断できれば資産を守りつつ着実に増やせるでしょう。

投資経験を積みながら知識を習得することで、どのような局面においても冷静に投資判断を下せる力を磨けます。上昇局面や下落局面でも冷静に対処するために、金融リテラシーを高めることは有意義です。

まとめ

NISA口座の開設数が増加しており、投資を行う人と投資に回るお金が増えつつあります。今後ますます投資に回るお金が増えれば、経済の活性化につながる期待が持てるでしょう。

投資を始めると自分の資産に意識が向きがちですが、為替や物価、金利政策などが密接に関わっています。金融リテラシーを高めることで、それぞれの情報をつなげて考えることができるようになり、投資判断を下す際に役立ちます。

ぜひ広い視野を持って投資と向き合ってみてください。

  • 本資料は、情報提供を目的として作成した資料であり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではありません。
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コラム著者

柴田 充輝氏
FP1級・社会保険労務士