2024年8月5日の日経平均株価は、過去最大の下落幅となりました。一転して、翌日の8月6日は過去最大の上昇幅となりました。(※執筆日2024年8月16日現在)相場が不安定な状況を受けて、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。相場が乱高下するときこそ、これまでの投資経験や有している知識を基に、冷静に投資判断を下しましょう。今回は、大切な資産を守るための「経験」と「知識」の重要性について解説します。

投資をしたことがない方はまず「経験」を

FP(ファイナンシャル・プランナー)として「投資には興味があるけど、なかなか踏み出せずにいる」という相談を受けることがよくあります。投資には損失を被るリスクがあるため、未経験者の方が踏み出しづらいと感じることは理解できます。なかには、「ずっとパソコンで株価を見ていなければいけない」「投資した金額がすべてなくなってしまうかもしれない」という、極端な印象を持っている方もいるかもしれません。そのような方と話をするときは、まずは少額でもよいので実際に投資を始めてみることをおすすめしています。まず始めることをすすめる理由は、実際に投資の経験を得ることで、実践的な学びを得られるためです。机上で株の仕組みや用語を学ぶことも重要ですが、身銭を切って経験を積むことで、より真剣味が増すでしょう。

例えば、投資を始めたことをきっかけに、自然と経済ニュースに意識が向いて金融リテラシーが高まるメリットが期待できます。「なぜ保有資産の価値が上がったのか(下がったのか)」を考えれば、さらに理解が深まるかもしれません。為替や株価が変動する要因や、各国の政府が発表する経済指標にはどのような意味があるのか理解すれば、経済的な教養を深めることが可能です。当然ですが、リスク資産に投資する以上は資産が増えたり減ったりします。実際に投資をして一喜一憂する中で、「冷静に投資に回せる金額は◯円まで」という、自分のリスク許容度を知ることができるでしょう。

資産を守るうえで大切な「知識」

このように投資未経験者の方には、まず経験を積むことをおすすめしています。しかし、投資や経済に関する知識を得ることも、重要だと考えています。自分の大切な資産を守るうえで、知識が役立つ場面があるからです。例えば、個別株式を購入する際にはPER(株価収益率)PBR(株価純資産倍率)などの用語理解や、株価が変動する要因を知る必要があります。また、投資する企業のビジネスモデルの理解も欠かせません。手間をかけずに分散投資できる投資信託を購入する際も、「何に投資しているのか」「どのようなリスクを織り込む必要があるのか」を知る必要があります。どの金融商品を購入するにしても、知識がなければ「どのような状況で利益を得られるのか」「どのような状況変化に弱いのか」を判断できません。

特に重要視しているのは「経済は循環している」「投資をする以上は下げ相場にも付き合わなければならない」という点を理解することです。経済が循環していることを知識として理解すれば、暴落が起きたときや市場が急に落ち込んだときに、狼狽売りをしてしまう事態を防げます。暴落している局面における狼狽売りは投資を行ううえで避けるべきことです。狼狽売りをすると、損失が確定してしまうだけでなく、その後の回復局面で利益を得られないため資産を増やすチャンスを失ってしまいます。

知識が資産を守ることにつながった、私の実体験に基づく例を紹介します。

2020年3月に発生したコロナショックのとき、私は500万円程度の元本を個別株式や投資信託の購入に充てていました。コロナショックにより、時価評価は250万円程度まで落ち込みます。よくわからない未知のウイルスのせいで、一気に投資にまわしている資産の約半分が失われてしまいました。私が本格的に投資を始めたのは2017年頃なので、市場参加者として暴落局面に遭遇したのは初めてです。コロナショック前までは株式相場も比較的堅調で、運用資産が順調に増えていただけに、強い衝撃を受けたのを覚えています。

しかし、さまざまな情報源から「経済は循環するから、暴落に巻き込まれても慌てずに保有し続けたほうがよい(可能なら買い増しも検討するとよい)」という知識を得ていたため、「売らずに保有し続ける」という判断ができました(買い増す度胸はありませんでした)。その後、約半年程度でコロナショック前の株価まで回復します。結果的に保有し続けたことで、資産を守るだけでなく利益を得られた貴重な経験となりました。

私の実体験のように、資産を守るうえで知識は重要な役割を果たしています。知識があれば、相場がどのように動いても、大切な資産を守るためにそのときにおける適切な判断を下せます。

株価(例)

2024年8月に起きた相場の急変動に関しても、似たようなことがいえます。冒頭で述べたとおり、2024年8月5日の日経平均株価は過去最大の下落でした。(※執筆日2024年8月16日現在)

日経平均下落幅の順位

しかし、翌日の8月6日には反発して過去最高の上昇となりました。(※執筆日2024年8月16日現在)

日経平均上昇幅の順位

もし8月5日の市況を受けて狼狽売りしてしまうと、翌日の上昇を取り逃していたことになります。相場が急変して慌てて売却すると、結果的に損をしてしまう事態になりかねません。実際に投資を始めたあとは、経験を積むことと並行しながら自分で知識を得ることも意識してみてください。

相場が不安定なときこそリスク許容度の再確認と冷静な情報収集を

投資で得られるリターンの源泉は、価格変動のリスクを負うことにあります。投資を行う以上、リスクを完全に排除することはできません。長期的に成長が見込める企業や投資信託へ投資しているのであれば、短期的な値動きを気にする必要はありません。経済は循環しているため、一時的に損失が発生しても、売却しなければ回復を待てます。

これまで相場の急変動が起きたときに回復を待てなかった方や、冷静さを失ってしまった方は、リスクの取り過ぎかもしれません。経験を積みながら必要な知識を習得し、適切なリスクの範囲内で投資と向き合いましょう。

 

※ 本文は、著者の調査・経験に基づき一般的な内容を掲載したものです。また、各種制度、政策および投資環境については執筆時点のものであり、将来変更となる可能性がございます。資産運用においてはお客様ご自身の収入や貯蓄、生活スタイル等に基づいてご判断ください。

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コラム著者

柴田 充輝氏
FP1級・社会保険労務士