仕事柄、さまざまな人のお金の管理術や運用法を見てきました。お金に関する情報があふれるなかで、どうしてその方法を実践しているのか、あるいは全くやっていないのかと観察していると、その人のベースとなる考え方や心理的要素が大きく影響していることに気づきました。そこで今回は、「お金持ちになる資質」ともいえる、お金に対する観念にフォーカスをあててみましょう。
早速ですが、以下の文章の( )の中に、思い浮かぶ言葉を書き入れてみてください。
先入観を持たないよう、あえて説明は後に回しますので、深く考えこまず、直感的に答えてください。
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文章を完成させられましたか? それでは解説していきましょう。
ここに書かれたことは、あなたのお金に対する「固定観念」を映しだしたものです。あなた自身が無意識のうちに強く信じている考え方で、普遍的なものではありません。さまざまな固定観念は、主に幼少期に形作られ、成長するに従い強固になっていくといわれてます。
そこで、設問の①と②では、その固定観念のベースとなった家庭の中でお金がどのようなものと捉えられていたかを確認しました。ここに書かれた答えが実際に当たっているか否かはわかりませんが、親の様子から子どもであったあなたがどのように受け取っていたかを把握することができます。
いろいろなキーワードが入っているかと思いますが、大別すると、お金が「幸せ」を運んでくるものであるか、争いなど「不幸」の原因となるものであるかに分けられます。あなたが作った文章は、どちらのニュアンスでしょうか。
③の答えが「いけないことだ」という内容を書いた方は、倹約の精神をお持ちなので、無駄遣いが少ないかもしれません。ただし、この気持ちが強すぎると、お金を使うたびに、うしろめたさや痛みを感じることになります。私自身も、浪費家のくせに、どこかで罪悪感を持ちながらお金を使っているため、せっかく欲しいものを手にしても、100%の幸せにつながっていないという残念な感覚にさいなまれることがあります。一方で、お金をたくさん使うことは「いいことだ」と答える人もいます。おおらかに人生を楽しんでいる姿が浮かびませんか。
④で「不幸」「孤独」「悪者」といったニュアンスのキーワードを書いている場合、お金に対してネガティブな印象を持っている人と言えるでしょう。「お金がたくさんあると不幸を招く」、「悪いことでもしない限りお金持ちにはなれない」と信じているなら、表層的にはお金を稼ぎたいと考えて動こうとしても、心の奥底でブレーキがかかるのではないでしょうか。
⑤は、ネガティブな言葉を入れたくなる文章に意図的に設定してあるため、友だちなどの「人間関係」や「時間」、「謙虚さ」を失うと答える人が少なくありません。多くの場合、失う対象のものはその人にとって失いたくない大切なものでしょう。お金持ちになることと引き換えに、大切なものを失ってしまうのだと考えていたら、葛藤が生じ、自らお金を手放してしまうことだってあるかもしれません。
一方で、「( )を失う」という文章を用意しているにも関わらず、わざわざ二重線をひいて、「失うものはない」と書きなおす人もいます。彼ら・彼女たちは、「お金持ちになって得るものはあっても、失うものなんてある?」と怪訝そうな顔さえします。お金が増えることはより幸せになるだけだと、信じて疑わないからです。そして、多くの場合、皆さん、実際に多くの資産を手にしています。
⑥は、お金を稼ぐための方法について、どのように考えているかの質問です。「もっと働くこと」や「勉強すること」といった答えが多いでしょうか。その心理には、うんと頑張らないとお金は入ってこないというベースが見え隠れします。⑦も同様で、資産運用は「いけないこと」、「難しいこと」だと思っていたら、お金を増やす機会が目の前にあっても、手を伸ばすことなく素通りしてしまうことになりかねません。
いかがでしたか? 皆さんは、お金持ちになりやすい考え方をしていたでしょうか。
固定観念は幼い頃から自然と植えつけられ、強化されていくものなので、それが「思い込み」であると気付かないかもしれません。でも、その信条が常に正しいもの、幸せに導くものとは限りません。その時代・また自分で意思決定できない幼いときは、その信条(たとえば「相場には手を出すな」など)があなたを守ってくれたかもしれませんが、時代の変化や、知識・経験の習得によって、かえって成長や幸せを遠ざけるものになっているかもしれません(たとえばインフレ下では、預金だけでは資産が目減りするので、リスクを分散しながら資産運用することは人生を助けることになります)。
固定観念は、コンピュータのOS(オペレーティングシステム)にあたるもので、全体の動作を管理・制御します。せっかく良いアプリを入れても、OSが悪ければうまく働かないでしょう。有益な情報が入ってきても、はじき飛ばしてしまったり、歪んだ方向で理解してしまうことになりかねません。
時代は大きく変わりつつあります。皆さんを動かしているOSが、この時代に合っているものかどうか、人生の目的にふさわしいものかどうか、この機会に検証して、適切なものに書き換えていきましょう。
※本文は著者のコンサルティング経験に基づいた内容となっており、弊社が提唱するものではございません。