サマリー
NISAは拡充され新制度へ移行
令和5年(2023年)度の税制改正大綱により資産形成時の優遇策として知られるNISA(少額投資非課税制度)は現行より拡充され、令和6年(2024年)1月から新たなNISAに衣替えすることが決まりました。岸田首相が掲げている「資産所得倍増プラン」の柱となるもので非課税投資枠の拡充など制度の使い勝手が大幅に改善されることになります。新たなNISAに名称はないことから以下では「新NISA」としてご紹介して行きましょう。 新NISAには大きく4つの特徴があります。
「新NISA」4つの特徴
- 制度は恒久化、非課税保有期間の無制限化現行の一般NISAの非課税保有期間は5年、つみたてNISAは20年でしたが新NISAでは無期限、つまり一生涯非課税保有が可能になります。口座の開設期間も一般NISAは10年間(2023年まで)、つみたてNISAは20年間(2042年まで)と制限がありましたが、新NISAは恒久化になったため思い立ったが吉日でいつでも口座を開設することができます。ジュニアNISAは2023年12月末で廃止されますが、新NISAの口座を開設できるのは18歳以上になります。
- 非課税保有限度額は1,800万円
現行の一般NISAの非課税保有枠は600万円、つみたてNISAは同800万円で、2つの制度を併用して利用することはできませんでした。ところが新NISAでは一般NISAは「成長投資枠」、つみたてNISAは「つみたて投資枠」に衣替えされます。2つの非課税投資枠は併用することができ、非課税保有限度額(総枠)は1,800万円となります。ただし、成長投資枠だけを利用する場合は最大1,200万円になりますが、つみたて投資枠だけの利用、あるいは成長投資枠とつみたて投資枠を併用すると最大1,800万円まで非課税投資が可能になります。非課税保有限度額は時価ではなく、簿価残高方式(取得価格)で管理されることになります。
- 年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円
非課税保有限度額は生涯で最大1,800万円ですが、年間の非課税投資枠は成長投資枠が240万円、つみたて投資枠は120万円になります。成長投資枠は一般NISAが衣替えしたものですから、投資できる商品は上場株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、公募株式投資信託などで、購入方法はまとまった資金で投資するスポット購入、つみたて購入のいずれも可能となっています。ただし「NISAは中・長期で資産形成を行う制度」という認識で金融庁は導入した経緯があることから、上場株式では管理銘柄や整理銘柄、投資信託であれば「毎月分配型」「信託期間が20年未満」「高レバレッジ型」は購入することができません。つみたて投資枠での購入は、現行のつみたてNISAと同じくつみたて方式に限定され、購入できる商品も金融庁が認可した投資信託とETF(現行のつみたてNISAと同じ)になります。 - 非課税投資枠の再利用が可能
一般NISA、つみたてNISA共に現行の制度では、年間の非課税投資枠を使い切れなく余った場合、その非課税投資枠を翌年に繰り越すことはできませんでした。また、購入した上場株式や株式投資信託などを売却した場合、売却して空いた非課税投資枠を再利用することはできませんでしたが、新NISAでは売却して空いた非課税投資枠は翌年に復活して再利用することができます。たとえば、新NISAを利用して累計で1,000万円の上場株式等を購入(残りの非課税投資枠は800万円)していて時価が1,500万円に値上がりしていたとします。半分の750万円分(簿価500万円分)を売却した場合、簿価500万円分の非課税投資枠が空いたことになり、翌年には500万円の非課投資枠が復活して残りは800万円から1,300万円になります。
NISAはいつ始めるのがよい?新NISA開始を待つべき?
新NISAの開始である2024年を待つよりも2023年から非課税制度を利用して投資を始めた方が良いと思われます。なぜなら、現行の一般NISAやつみたてNISAと新NISAは別物で、両方使うことが出来るからです。
新NISAの位置づけ
新NISAは現行の一般NISAとつみたてNISAとは全く別の非課税投資制度という位置付けになります。別の制度になるため2023年中に一般NISAで購入した上場株式等は最長5年間(2027年まで)、つみたてNISAは最長20年間(2042年まで)新NISAとは別枠で非課税措置が継続することになります。このため現行の一般NISAで購入している上場株式等を新NISAへロールオーバーすることはできません。また、2023年中に現行のNISA制度を利用して非課税投資を始めれば、一般NISAは新NISAと合わせて1,920万円(2023年中に利用できる一般NISA120万円+新NISA1,800万円)、つみたてNISAは同1,840万円(2023年中に利用できるつみたてNISA40万円+新NISA1,800万円)の非課税投資を行うことができます。
現行の一般NISAやつみたてNISAはiDeCo(個人型確定拠出年金制度)とよく比較されますが、iDeCoは2022年に全勤労者が利用できるようになったり、国民年金の被保険者であれば65歳まで掛け金の拠出が可能になったなどの改正が行われましたが、令和5年度の税制改正では制度や課税関係を含め変更等はありませんでした。こちらについては、今後のコラムにて詳しく述べることにしましょう。