世界経済が地球の気温上昇を2℃未満に抑えるという目標を達成する見込みは遠のいています
環境に優しいソリューションや製品に移行するためには、産業界全体の再編が必要です
エネルギー移行は投資家に多くの点で恩恵を与えます
石油や公益関連など化石燃料にまだ依存している企業は、すでに信用格付の悪化に直面しています。
パリ協定は地球の気温上昇を2℃未満に抑えることを目標としています。しかし、現状では、この目標に向けて世界は順調に進んではいません。気候変動に関する政府間パネル(IPCC) [1]によれば、CO2やその他の温室効果ガスの排出量を数十年以内に大幅に削減できなければ、地球の気温上昇は今世紀中に2℃以上上昇してしまいます。
2℃未満目標の軌道に戻すために、かなり大掛かりな変化が起こらなければならないことは明白です。企業には、カーボンニュートラルな製品への転換と環境意識の変化が今後より求められることでしょう。そして、いつの時代もこうした状況下では、投資家にはチャンスと同時に危険な落とし穴が待ち構えています。
変化の影響はセクター によって異なります。エネルギー企業や自動車メーカーは、再生可能エネルギーや電気自動車へのシフトを迫られ大転換を余儀なくされるでしょう。そして、中期的に何の影響も受けない企業は、ごく一部に限られると思われます。例えば、CO2の排出量が比較的少ない銀行でも、融資先または投資先企業を通じてリスクに曝される可能性があります。
これらは、債券投資家が念頭に置くべき極めて重要な要素です。なぜならば、再編には大きな変革と巨額の費用が必要になるからです。「石油や公益事業など化石燃料にまだ依存している企業は、すでに信用格付の悪化に直面しています。多くのセクターでは2℃目標を実現するために、大規模な改革だけでなく研究開発も必要になるでしょう。」[2]とデ・フェは考えています。
しかし、同時に大きな収益機会も生まれるとデ・フェは指摘します。「例えば、自動車セクターを例に挙げてみます。ある自動車メーカーが富裕層ではなく幅広い一般大衆が購入できる電気自動車の開発を先行すれば、次世代市場 で大きなシェアを獲得することになります。ここで見過ごされやすいもう一つの重要な要素があります。それは企業が事業の見直しを実施し、トランジッション=移行に対応していくことが社会に及ぼす反響についてです。」「低炭素経済への移行が、社会的に受け入れられるものかどうかを確認する必要があるのです。それはつまり、一部のひとたちに対して格差を広げ社会不安を高めるようなマイナスの影響をもたらさないということです。」[2]
「ここでも自動車の例を挙げますが、テスラが市場で唯一の電気自動車であったとしたならば、それはエネルギー転換が事実上富裕層だけに限られることを意味します。」[2]
加えて、移行による予期せぬ影響を考慮することも重要です。例えば、従来のエンジンではなく電気自動車エンジンに生産をシフトするということは、労働者の一部が解雇される可能性があることを意味します。 この動きによって、これまでとは異なるスキルセットが求められるようになるのです。さもなければ、2030年までに労働人口の30%が削減されることにつながります。企業はこうした社会的課題にどう対応できるのでしょうか?
出所:
[1] https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/report/IPCC_AR6_WGI_SPM.pdf
[2] アムンディフランス、債券ポートフォリオマネジャーのアルバン・デ・フェとのインタビュー、2021年5月10日
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文書作成日: 2022年5月30日
文書番号:2389947