6月の投信市場は6カ月ぶりに資金流出も、販売額は急回復

7月13日に投資信託協会が、6月の投資信託概況を発表しました。個人投資家の動きを反映すると言われる上場投資信託(ETF)を除く追加型株式投信の純設定額は-1414億円と、5月の+1652億円からマイナスに転じました。 純設定額がマイナスになるのは6カ月ぶりで、2020年に入って初めてのこととなります。 一方で、純設定額の内訳となる設定額(販売額)、解約・償還額を見ると、緊急事態宣言の解除で経済活動が再開しつつあることを受けて、それぞれの6月の数字が大きく増加に転じたことが分かります。6月の設定額は1兆8756億円となっており、4月・5月の1兆円台前半から急回復しています。 2019年の月間の設定額平均値が1兆5000億円程度であったことからも、投信の設定額自体はまずまずの水準まで回復したと言えるでしょう。

ETFを除く追加型株式投資信託の純設定額とその内訳

それでは、増加した投資信託の設定額は、具体的にどのような商品に向かったのでしょうか。 Vol.6では、アムンディが「“ROAD TO RECOVERY(回復への道のり)”」というキャンペーンを通じて、欧州の投資家を中心に3つのステップでの投資を提案していることを取り上げましたが、その具体的な提案内容とともに、日本の投信市場の足元の販売動向を確認していきたいと思います。

「回復への道のり」のステップ1は社債投資から

クレジットからスタート

まずは、最初のステップとして挙げられている「クレジットからスタート」についてですが、世界的に国債利回りが低下していることに加えて、コロナショックによって国債と社債の利回り差が大きく拡大したことで、社債の魅力が高まっているというものです。 アムンディの中心的なシナリオとしては、新型コロナウィルスの第二波への懸念などもあり、金融市場の不安定化は再燃する可能性もあると考えている一方、前例のない金融・財政支援がクレジット市場を安定化させるとの見方が背景にあります。

具体的には、欧州では「バイ・アンド・ウォッチ」という仕組みを活用した社債投資が推奨されているようですが、これはファンドの償還期限と投資する債券の満期をおおよそ一致させて、原則的には当初購入した社債を満期まで持ち切るような運用を行うものです。 こうした仕組みによって、ファンドの償還時点での値下がりリスクをさらに抑制することを目指しており、日本でも単位型や限定追加型で、同様のファンドがこれまで多く設定されてきました。 実際、コロナショック後の投資信託市場でも、6月に転換社債(CB)に投資する限定追加型が個別ファンドの資金流入額ランキングでトップとなるなど、日本でもステップ1の考え方は実践されているように思います。

ただし、国債と社債の利回り差については、3月にピークに達した後、格付の高い社債ではすでに利回り差は、かなり縮小しています。 また、欧州ではユーロ建ての社債に投資することで、為替リスクを回避することが可能ですが、日本では社債市場が未成熟であるため、外貨建ての社債に投資するのが一般的となります。 為替リスクを回避するために為替ヘッジをすることも可能ですが、その場合はヘッジコストが変動要因にもなるため、ゼロを少し上回る程度の社債投資にはなかなか踏み切れないのが現状です。 そういった背景もあって、格付けを下げてハイイールド債券を活用するといった動きも出てきており、コロナショック後にはハイイールド債券ファンドが資金流入額の上位に名を連ねる場面もありました。 欧州の事例と同じ投資戦略が有効とは限りませんが、こうした工夫をすることで、日本の個人投資家ならではの「クレジットからスタート」を実践していくことができるのではないかと思われます。

「回復への道のり」のステップ2はバランス型

幅広くリスクを分散し慎重姿勢を維持

続いて、ステップ2の「幅広くリスクを分散し慎重姿勢を維持」ですが、欧州で推奨されているのは、リスクが抑制された保守的なバランス型ファンドや、ESG(環境、社会、企業統治)にフォーカスしたバランス型ファンドであり、これ以外には、ポートフォリオに金に配分するような提案もなされているようです。 いずれにしても、ステップ2の考え方で重要なことは、金融市場が不安定だからといって投資を止めるべきではなく、しっかりと分散してリスクを抑制した上で投資を継続する、ということです。 また、新規に投資をスタートする投資初心者の方々においては、やはりリスクの抑制されたバランス型ファンドなどを活用することが重要だということを改めて認識する必要があるでしょう。

日本においても、バランス型ファンドへの資金流入は、新しい投資家の方々や新規の資金が追加されているかどうかを確認する試金石と言えます。 2008年9月のリーマン・ショックを契機とする金融危機前後には、バランス型ファンドの資金流入が止まってしまい、一時的に資金流入に転じる場面もありましたが、2012年後半まで長期に渡って資金流出に苦しむことになりました。 今回のコロナショックでは、急落後の戻りが早かったこともあり、バランス型ファンドの純設定額は4月にマイナスになった後、5月・6月ではプラスに回復しています。 ステップ2に当たる、リスクを分散しつつも株式に投資するということがしっかり行われているかを確認する上でも、注目していきたいと思います。

バランス型ファンドの純資産残高と純設定額

「回復への道のり」のステップ3は長期トレンドを捉えた株式ファンドで

長期トレンドから回復の恩恵を受ける

最後に、3つ目のステップとなる「長期トレンドから回復の恩恵を受ける」というものです。 これは、株式投資において「選別的」な投資が重要になることを指摘していますが、今回のコロナショック前後の株式相場では、大きく下落したセクターやテーマが、その後の反発局面での回復力に大きな差が出てきています。 一般的に、大きな外部ショックが発生した場合、より良い形で危機を脱出する企業は、次のフェーズで出現する機会をつかむことができる企業であるという傾向があります。 つまり、今年2-3月のような弱気相場で大幅に落ち込んだセクターやテーマが次の強気市場を牽引するといった前例はほとんどなく、投資家は最も大きな打撃を受けたセクターを回避する必要があると考えられます。 3月下旬以降の反発局面で大きく戻しているのは、テクノロジーやメディカルセクターでしたが、こうした分野はアフターコロナの世界でも必要な、成長する分野であると認識されていると思います。 実際に、日本の投資信託市場でも、こうしたテーマ型の株式ファンドに資金が集まっているようです。

欧州の事例では、ステップ3の具体的な投資アイデアとして、破壊的創造を実現しうるテーマを複数選択するようなファンドや、気候変動を解決する企業に焦点を当てたファンド、ESGのうち「S(社会)」により焦点を当てた投資戦略などが紹介されています。 従来型のセクター投資やテーマ投資もパフォーマンスに大きな影響を及ぼす要因となりますが、コロナショックからの回復過程における投資戦略を考える上では、より長期的な時間軸で社会の変化(トレンド変化)を捉えることが重要になります。 アフターコロナの「新しい日常」が定着するにつれて、こうしたトレンド変化を捉える「選別的」な株式投資を行うことによって、年後半以降の景気回復の恩恵をより大きく受けることが可能になると考えられます。

「選別的」な株式投資の考え方(イメージ)
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