老後を迎え人生の最晩年を意識し始めると「介護」や「終活」を考えておかなければなりません。厚生労働省の「介護給付費実態調査」によれば、2020年(令和2年)4月審査分の要支援を含めた要介護認定者は約690万人で、要介護(要支援)と認定される割合は、65歳以上の5.2人に1人、75歳以上では2.9人に1人となっています。生命保険文化センターの「2021年(令和3年)生命保険に関する実態調査」によれば、介護にかかった期間の平均は61.1ヵ月ですが、10年以上あった割合も2割弱もいます。介護が必要になった場合の一時的な費用は74万円ですが、200万円以上かかったケースも少なくありません。一時的な費用のほか、毎月発生した介護費用の平均は月8.3万円です。一時的な費用は住まいのバリアフリー化などによって大きく変わりますが、平均的な費用が平均介護期間かかった場合の単純な費用は約581万円もの介護費用がかかることになります

介護費用

介護で困らないようにするために

健康寿命が男女ともにおおよそ70歳代前半であることを考えると介護は決して他人事ではありません。介護にならなくとも医療費が当初の想定よりも大きな金額となるケースもあるため、介護や医療費をどのように負担するのかを考えておかなければなりません。体の衰えにより老人ホームなどへの入居が必要になることもありえます。老人ホームなどへの入居は、大きな費用が発生することがあるほか、歳を重ねるほど心身への影響が大きいともいわれています。介護や認知症などが始まってから施設を決める場合、選択肢が限られてしまい入れるところ(空いているところ)に入所というケースが多々あり、満足のいく晩年を過ごすことができなかったというケースもあるようです。老人ホームなどは施設によってサービスや費用などが大きく異なるため、可能な限り元気なうちに下見を行うほか、体験入所や体験宿泊などを行い大まかな費用も把握しておくと大きな失敗はないようです。また「妻は介護をする人される人」ともいわれます。一般論ですが、妻は夫の介護を行い、夫を見送った後に自分の介護が始まるのです。夫は自分が亡くなった後、妻が自身の介護で困らないように人の面、費用の面などをしっかり配慮しておくことが大切になります。

残りの人生を穏やかに過ごすための「終活」の3つのメリット

「終活」とは、死と向き合い亡くなるまでの最後の期間、自分らしく人生を過ごすための準備のことです。年齢を重ねていけば、体の衰えや健康状態も健常期と比べると芳しくなくなり、自然と「死」と向き合うことが増えてくることになるからです。死と向き合うのは難しいことですが、終活を行うことで自分のおかれている状況を客観的に把握することができ、残りの人生を穏やかに過ごすことができると言われています。  以下で終活の3つのメリットを述べて行きましょう。 1. 終活は自分の考えや意思を家族に伝えることができ、残りの老後の生活に前向きになれることです。 2. 家族に自分の考えや意思を伝えることにより、残された家族の生活が充実することです。歳を重ねるとさまざまなことがおっくうになり、ともすると後ろ向きな気持ちになりがちですが、最終的な死を人生の到達点(ゴール)とするならば、先行きが曖昧であるよりも、到達点がある程度自分自身で把握できることで、残りの時間(人生)を有効に活用できるといわれています。 3. 相続におけるトラブルを回避できることです。相続は金銭が絡むことから「誰がどれだけ、あるいはどんな資産を受け取れるのか」が明確になっていないと、大きなトラブルに発展しかねません。相続では亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月の間に遺産分割から必要であれば確定申告・納税までを行う必要があることから、トラブルになると期限内に相続が完了しないケースも多々あるからです。 我が家は資産が少ないから大丈夫と考えるのではなく、財産の多寡にかかわらず遺産配分の希望があるのであれば「遺言書」を書くなど事前準備(亡くなる前、思考が明確なうちに準備)を行っておく必要があります。

終活のススメ『エンディングノート』

終活には定形的な決まりはありませんが、自分の思いや考えをしたためる(まとめる)という観点から「エンディングノート」を書くことが勧められています。書店などに行けば「エンディングノート」と称した冊子がたくさん売られていますが、正式な規格があるわけでもありません。また、書かなければいけない項目も決まっていないことから普通のノートなどでもかまいません。ただ、普通のノートだと何を書いたらよいのか、何から書いたらよいのかというケースもありえるため、市販のエンディングノートを活用するのが無難でしょう。エンディングノートには、自分のプロフィールなどや自分史、現在健康状況、医療や介護の希望、葬儀・お墓などの希望、家族への思いなど、気になることを書くのが一般的です。ただし、エンディングノートは法的効力を持っていないことから遺産相続には活用できません。遺産相続については法的効力を持つ「遺言書」を書いておくべきです。

エンディングノートに各事柄の例
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コラム著者

深野 康彦⽒
有限会社ファイナンシャルリサーチ代表