2023年度の春闘における賃金上昇率は3%後半と1993年の3.9%以来の高い伸びとなりましたが、過去数十年の賃上げ率が低迷していたため賃金が増えた実感は薄いと言わざるを得ません。この間健康保険料や年金保険料などの負担は増え続けてきたことから、むしろ手取収入は減少してきたと言った方が良いのかもしれません。2024年度も3%を超える賃金上昇があれば少しは溜飲を下げられる可能性もありますが、勤め人が収入を自助努力で増やすのは至難の業。否、勤め人は勤務先が収入を決めていることから、自分自身で収入をコントロールすることはできないというのが正しい回答になるでしょうか。終身雇用制度は崩壊しつつある現在では、収入を増やすためには転職をする、副業をするなどいくつかの選択肢を挙げることができますが、今回は副業をすること中心に述べて行くことにしましょう。

近年の副業動向

近年では副業を認める企業が増えていることから、副業をしている人は大幅に増えています。総務省が7月下旬に公表した「就業構造基本調査(2022年)」によれば、全国で副業をしている人(本業が農林業を除く)は305万人いて、5年前と比較すると60万人増えています(同調査が5年に1度の調査)。副業をしている人は正社員、非正規社員共に5年前より増えており、副業の内容は「卸売業、小売業」が最も多く42万人、「医療、福祉」が40万人と続いています。副業の目的は収入の確保のほか、キャリア形成などがあるようです。

副業の心構え

収入アップのために副業をするにあたり注意したい点は2つあります。1つは原則、本業に支障を来さないようにすることです。あくまでも本業が「主」で副業は「従」になるということです。収入アップのために従である副業に精を出すあまり本業が疎かになってしまい本業の収入面に影響が出るようでは本末転倒です。あくまでも収入を補う程度の心構えで副業は行うべきでしょう。平日の就業終了後、あるいは土日祝日に副業を行うケースが多いと思われますが、休み無く働くのもあまり感心できないため、いくら収入のためでも休むとき、働くときのメリハリはしっかりつけるべきでしょう。最近ではスキマ時間にちょこっと副業をするケースも徐々に増えているようなので、スキマ時間を活用する場合は専用のサイトなどを活用されると良いでしょう。ただし、副業に相応の時間を割くことができるのはある程度体力や気力がある若年時代が中心になると思われます。もちろん人によって体力や気力は異なるため、ひとくくりにはできませんが、一般的に歳を重ねれば重ねるほどその日の疲れなどを翌日に持ち越さないようにするのが難しくなるようです。このため歳を重ねるほど副業で無理は禁物といえるでしょう。

副業の注意点

もう1つは副業の収入も課税と対象となることです。ばれなければ大丈夫などと邪な考えをせずに副業で得た収入は確定申告を行い納税しなければなりません。収入を得た翌年の原則2月16日から3月15日の間に確定申告は行いますが、副業によって得た収入の種類によって図のように所得区分が異なることは注意が必要になります。

会社員等の主な副業所得の種類

副業で何をするのかは自由ですが、本業と似通った副業を行うと体や精神面に与える要因が同じになりやすく疲れ(負担)が2倍になるという人もいるようです。疲れを倍増にしないためには副業は本業と全く違うことを行う方が、精神面を含めた体を使う部分が異なるため疲れにくいという声があることも付け加えておきましょう。

キャリア形成のために副業を選択する

筆者の若かりし時代は副業という概念が無かったことから、収入を増やす、あるいはやりがいのある仕事をする、ライフスタイルを変えるためには転職するしか方法はありませんでした。近年ではキャリア形成のために副業をする人も増えているようですが、キャリア形成の概念が変わってきたことがその背景になるようです。一般的には「仕事に必要なスキルを身につける」という意味ですが、近年では「どんなキャリアを歩みたいのかを明確にし、必要なスキルや強みを身につける」という意味で使われるようになりました。そのキャリア形成のために副業をするのも選択肢のようですが、キャリア形成のためには「周囲と比べたり、周囲に合わせたりせず、自分の価値観に合わせて副業先」を選ぶことが大切になります。副業とは異なるものの、筆者が転職する際(平成元年当時)には当初は父親に反対されたのは言うまでもありません。最終的にはしぶしぶ納得しましたが、転職目的は父親のために行うのではなく、自分自身のために行う!と自分自身に言い聞かせたことを思いだしました。ライフスタイルが多様化しているのですから、働き方も多様化していて当たり前、自分自身が描くライフスタイルを描くことができるのであれば副業、転職はいとわないと考えるべきでしょう。収入アップを含めて副業、転職などは自分自身のために行うのです。

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コラム著者

深野 康彦⽒
有限会社ファイナンシャルリサーチ代表