私たちは、不平等に対処するために、企業との対話のなかで、世界中のすべての従業員に最低基本レベルの福利厚生を保証し、それぞれが個人として尊重されるよう包括的なポリシーの策定を促しています。

いつも大気汚染がひどい都市の一つであるニューデリーを歩き回っているときに、ふと地平線上に見える山々、あるいは、パリの郊外で道路を横切る鹿...あなたは想像できますか?

パンデミックの期間中、人々の活動が減少したことで、多くの都市で自然の景観が復活しました。これは、人々のシンプルな行動が生態系全体や野生生物のコミュニティに恩恵を与えることができるのかを示しています。

気候変動が喫緊の課題となっている状況はこれまでと変わりませんが、私たちはパンデミックを経験したことで気候変動やその他社会的諸問題にいっそう目を向けるようになりました。カーボン・ブリーフ[1]によると、2020年4月時点での温室効果ガスの年間排出量は前年比5.5%減少したと推定されています。それでも、この減少幅は地球にとって本当に必要と考えられている温室効果ガス排出量の削減幅には達していません。

パンデミックがもたらす悲劇的な影響は、気候変動や社会問題に対処するための政策や公共投資を遅らせるというリスクがあります。こうした問題に取り組むプロジェクトに資本を振り向ける上で、投資家が政府と協力して果たすべき役割の重要性は、パンデミック発生前よりも高まっていると言えます。

例えば、世界で1兆5,000億ユーロ(約195兆円)[2]を運用する欧州有数の資産運用会社[3]であるアムンディは、パンデミック発生後の気候変動対策について、改善、悪化、現状維持の3通りのシナリオがあると考えています。

改善シナリオでは、政府と企業が持続可能性への取り組みが加速します。悪化シナリオでは、気候変動へのコミットメントが他の問題へのコミットメントを下回り、温室効果ガス排出レベルの悪化につながります。一方、現状維持のシナリオでは、限られた企業がより持続可能なビジネス・モデルに移行します。

気候変動だけではない

ESG投資に関しては、気候変動が最優先の課題であることに変わりはありませんが、パンデミックによって従業員の権利やサプライチェーンにおける不平等などの問題に対する議論が起こり、投資家の問題意識が高まったと私たちは考えています。そのため、投資家はこれまで以上に企業とのエンゲージメント(対話)を行い、変革を求めるようになっています。

アムンディでESGリサーチ・議決権行使・エンゲージメントの責任者を務めるカロリーヌ・ル・モーは、「気候変動や生物多様性への課題は、相互に関連しており、これらを忘れてならないのですが、パンデミックを受けて、社会的な課題がより重要になるものと予想しています。」と述べています。

パンデミック発生がホテル、旅行、その他のセクターに打撃を与えたため2020年5月の米国の失業保険申請件数[4]は、3,600万件に達しました。また、多くの先進国および発展途上国でも、サプライチェーンが大きな被害を受け、経済が低迷したことから、世界中の企業が人員整理を行いました。こうした状況を受けて、大手投資家は従業員の権利を見直し、企業が利害関係者を保護するために、今後どのように取り組んでいくのかについて評価するようになりました。

私たちは、企業との対話のなかで、世界のどこにあっても従業員に最低基本レベルの福利厚生を保証し、経済社会的な格差に対処するための包括的なポリシーの策定することなど、それぞれが個人として尊重されるような取り組みを促しています。

格差への対処には、医療や健康維持に必要な食事、労働者の権利、生活賃金が含まれます。アムンディが取り組んでいる分野は、国連が設定した、「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」、「すべての人に健康と福祉を」、「働きがいも経済成長も」、というSDGs(持続可能な開発目標)[5]の項目と直接的に結びついています。

不平等や生活賃金への対処は国によって差があるかもしれませんが、世界共通の問題であると私たちは考えます。

生活賃金vs.最低賃金

最低賃金は政府が設定する額であり、生活賃金は国ごとの平均的な生活費によって決まります。

例えば、米国では最低賃金は1時間当たり7.25ドルとされていますが、これは消費者物価指数と連動していません。[6]消費者物価指数と連動していれば、最低賃金は10.15ドルとなるでしょう。

最低賃金で賃貸住宅に住むに必要とされる労働時間

最低賃金労働者が賃貸住宅に住むためには、年間2017時間働く必要があります

米国で最低賃金で働く労働者が、標準的な労働時間である週40時間働き、収入の30%以内を賃料として支出するとしても、平均的な貸料のワンルームの部屋すら借りることはできないのです。

最低賃金で賃貸住宅に住むに必要とされる労働時間
出所:MIT

出所:

[1] https://www.carbonbrief.org/analysis-coronavirus-set-to-cause-largest-ever-annual-fall-in-co2-emissions
[2] アムンディのデータ、2020年7月30日時点
[3] 出所であるIPE「資産運用会社上位500社」は2020年6月に発行され、2019年12月時点の運用資産に基づいています
[4] https://www.theguardian.com/business/2020/may/14/unemployment-us-data-coronavirus
[5] より詳細な情報はhttps://sdgs.un.org/goalsをご覧ください。
[6] アムンディ2019年エンゲージメント・レポート

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文書作成日:2020年10月9日
文書番号:1750982

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コラム著者

カロリン・ル・モー
ESGリサーチ・議決権行使・エンゲージメント責任者